社会の縮図 POLITICAL MOTHER THE CHOREOGRAPHER'S CUT

2019年2月2日、「KAT-TUN上田竜也さん 世界的ダンスカンパニー公演の主演に抜擢」というニュースで狂喜乱舞してから早2ヶ月、4月8日に観劇してきました!一回しか見てないので詰めが甘いところがあるかと思いますが、自分の考えを残します。

 

この舞台は、上田くんも言っている通り、「観る人によって感じ方が違うと思う」というのが肝な気がしていて、文化的背景によってかなり感じることが違うのではないでしょうか。

 

芸術作品を鑑賞する際には、色々な芸術・歴史・宗教などに関する”コード”をどれくらい持っているかで受け止め方が大きく変わると思います。このPOLITICAL MOTHER THE CHOREOGRAPHER’S CUT(以下ポリマザ)というコンテンポラリーダンス、音楽、衣装の変化、そして架空の言語である”ポリティカル語”から成る公演なんて、どれだけでも自分で考察しがいのあるものなので尚更です。

 

まぁ、前置きはさておき、ここから本題に入っていこうかと思います。今忙しいのでパパッと書くので読みにくいところがあると思います、ごめんなさいね。自分が見返しやすいように書くので見出しとか鬱陶しいかも。

 

POLITICAL MOTHER THE CHOREOGRAPHER'S CUTって、直訳すると「政治的な母 振り付け師のカット」になります。まぁ普通に意味がわからないっすね。タイトルと内容を絡めて書いていきますね。じゃあまずPOLITICALについて考えます。

 

*POLITICAL

私はこの舞台におけるPOLITICALは、「歴史が始まった地点から現代までにおける、人に身分の上下が生まれた”政治”のある世界」のことを指すと思います。単語の意味なのに要約できない…

この舞台において、POLITICALっぽい、政治的な部分は上田くんが軍服やスーツを着ているところかなーと思います。また、アジア人的な見た目の男性ダンサーが甲冑を着て切腹するシーンとかかな。

 

軍服を着て、ポリティカル語で演説しているのなんだかナチス・ドイツヒトラーみたいでしたね。昔、美術展でヒトラーの演説の映像が流れている部屋があって、恐怖を感じたことがあります。その映像のヒトラーを彷彿させるんですよね、ヒトラーって演説が上手かったって有名じゃないですか。現在のアメリカ大統領が似たことを言われているのですが、まぁプレーンな内容を身振り手振り大きく喋ると、知識人以外の層(=社会の大半)に支持されやすいよ、みたいな。喋る内容さておき、どれだけ民衆の目を惹きつけるかが重要視されるってことです。言葉や政治が理解できない人ほど、人の見た目や周りの人間の反応から判断するので、いかにもカリスマっぽいとついて行こうかなってなりますよね。

舞台においては、ポリティカル語が使用されているので上田くんの言っていることがサッパリ分かりません。それでも、舞台の3階センターに立つ上田くんに支配されるのが怖くてしょうがなかった。言葉がわからなくても、周りの人間の様子に合わせたり、合わせざるを得なくなったりするので、だんだんと逃げ場がなくなるんでしょうね。ダンスも、最初は2人で踊っていても、だんだん人数が増えて同じ動きをするようになっていたのはそういう表現なのかな。マイノリティとマジョリティは流動的である、ってことかと。あの場において支配されている民衆役はダンサーだけではなく、私たち観客も含まれているのだと思います。椅子に座っている観客は、ダンサーさんたちと比べたら上田くんと距離がありますが、席を動けませんからね。舞台の終盤、上田くんの演説の途中に客電がついたところからもそう考えて良いはず。

ダンサーさんの中でもピンスポが当たって1人別の動きをしたり、ポリティカル語で叫ぶ役がいらっしゃいました。前者はその後、集団の動きに合わせたのでマイノリティからマジョリティへの移行かな。後者はマジョリティに異を唱えているのかな...人間の歴史は繰り返すってよく言いますが、ダンサーさんはその表現もしてそう...

 

私は1階前方から見たのですが、ボイスチェンジャーのついたスタンドマイクがガスマスクのように見えました。上田くんが顔を動かして初めてスタンドマイクだと気付きました。最初のスーツでの登場ではあまり顔を動かさないのですよね、多分。動かしてたらすぐ気付くはずですもの。ガスマスクからナチスガス室を連想して、「あー、ユダヤ人はガス室で虐殺されたのに、権力者はそこから逃れて1階の民衆を傍観していたのを皮肉っているのだな」と思いました。ホフェッシュさんの国籍がイスラエル(ユダヤ教キリスト教イスラム教の聖地がある)なので、幼い頃から宗教には触れてたでしょうね。

 

手を上に上げる振り付けがかなり頻繁に登場しましたね。私は何か天に向かって祈ったりしてるみたいだな、と思いましたが、そこまでゴリッゴリに宗教推すかな...?でもまぁ人間の歴史全体で考えると、政教分離が叫ばれたのなんて短い期間なのであり得なくはないか...難しい...

 

あと落ちないようにか分かりませんが、上田くんのところにはメッシュの幕みたいなのありましたね。なんか距離感がリアル。一枚隔てて民衆を煽る感じ。

 

2階のストリングスの方々は全編同じ衣装で、表情の変化もあまりなかったです。それに対して、1階のパーカッションの方々は、無表情・前をしめた軍服の時と、激情・Tシャツ(または軍服の前開け)の時がありました。これは何を意味しているのかな〜〜。上田くんやダンサーさんの衣装がちょくちょく変化していたので、衣装の変化になんらかの意味はあったはずだけど、あんまりよくわからないです。

 

でも、あのテロテロのアイボリーの素材は、どこの国においても庶民の服として古から着用されていたものなので、”社会の下層”の表現する上で不可欠だったと思います。ストリングスのあの服装とあまり変化しない表情は、争いのない落ち着いた時代の表現なのかな。

 

その中でも、赤いワンピースを着用したアフリカ系女性(見た目からの判断ですが、便宜上そう表記します。申し訳ございません)は一際目を引きましたよね。ちなみに、赤い服の男性も1人いました。それについては”MOTHER”に関わると思うので後々触れます。

 

そして甲冑。舞台冒頭で武士が切腹をします。衝撃的でしたよね。それは”POLITICAL"に関するものですね。西洋の方からすると”切腹(ハラキリ)”ってかなり理解ができないものだそうです。私の大学のフランス人の先生はハラキリした作家について研究しているので、ハラキリについて喋らせるとめちゃくちゃ長いです。そして、イギリスの大学の日本語が喋れないイギリス人の先生もハラキリは知ってました。(あと過労死も知ってた。)

 

「お国のため」とか言って、自分の命を絶つのは意味がわからない。自分が生きて成果を上げることが、「お国のため」になるんじゃなかろうか。

 

現代を生きる私たちからすれば、同意しかないと思うんですけど、昔の武士は本気で命をかけてたんでしょうね。それが”上から求められる行為”であったんでしょう。良くも悪くも、社会のために空気を読む国民性なのではないでしょうか。

中盤、アジア人的な見た目の男女のダンサーが愛し合うようなシーンがありましたが、女性がいくら男性に詰め寄ろうとも、男性は女性から離れて、エア切腹をしてしまっていて(冒頭の切腹シーンの剣がない状態で同じ姿勢で硬直する)、「少なくとも一人の女性が男性のことを大切に思っているのに、国なんてデカイもののために自らの腹を切るなんて馬鹿らしい、滑稽」と感じました。

人が死んでいるのは事実なんですが、なんつーか、いやいや落ち着けよみたいなの時代劇であるじゃないですか。感動ポイントが引っかかったまま終わってしまう映像作品とかありますよね。そこでお前が死んだら残された人間どうすんだよ、なんも泣けねぇわってなるじゃん。

 

うまく言葉がまとまりませんが、ポリマザが日本で上映されることって結構なことだなって思ったんですよね。作っている人や演じている人の価値観が日本人がつい美徳としてしまうことから大きく離れているから芸術として、表現として成立している節があると感じてしまいました。その主演を務め、民衆を扇動する上田くんが日本人であること。結構グロいよねぇ…まぁ、私は上田くんが主演を張っていなければ、このカンパニーのことを知らないまま生きていたと思うので、ホフェッシュさんのキャスティング力はとってもありがたかったのです。

 

なんの話だ

 

あぁ、最初の両手を広げるダンサーさん2人はなんだったんだろうなぁ〜...1人は知識人ぽかったよねぇ服装的に...もう1人の服は覚えてないやぁ...

 

 

 

ざっくりと言うとこの舞台は、「権力者の台頭により、人に生まれた上下、それによって引き起こされる自然と異なる事象」を表現しているパートがあるのかと思います。

 

*MOTHER

先述の通り、この舞台においては”赤いワンピース”を着用したアフリカ系女性が一人出演しています。アジア人男女一人ずつとこの女性以外は多分ほぼヨーロッパ系ダンサーだったかな。

 

一番最初の人類とされているのはアフリカの女性です。彼女はミトコンドリアイブと呼ばれています。私もあんまり理系のことはわからないので雑に言うと、「女性のミトコンドリアしか受け継がれない」らしいです。よく分からない。

まぁでもポリマザにおいてこの女性、男性に囲まれた時に、わざとスカートの中に手を突っ込んでめくりあげてるシーンがあって私ラッキースケベしちゃったんですけど、男性を惹きつけるという意味ではまぁわかりやすいアピールしてんじゃんみたいな。あっどうでもいいですけど、ブラジャーもつけてませんでしたね。踊りやすいからだと思いますけど、ちょっと痛そうだなって思いました(小並感)

 

上田くんを見ていても分かったと思いますが、この舞台めちゃくちゃ性愛パートありますよね。男女数組のところとか。そこまでは音楽とかで聞こえなかった荒めの吐息がはっきり聞こえましたね。息上がってんのか、最中の表現なのか、はたまたその両方なのかわかりませんが…鳥とかも求愛行動で踊るし、性愛とダンスって関連してますね。

 

人間が存続していく上で、女性は必要不可欠な存在です。ミトコンドリアも伝えてくれるしね。そもそも”産む”苦しみを味わうのは女性だけです。なのに政治とかの文脈だと死ぬのは大抵男なんですよね。(実際の歴史でも、女性も結構死んでますけど、歴史に残るのはいつも男性ですよね〜)拳銃のところとかも主に狙われるのって確か男性でしたね。

 

切腹も拳銃も、死を意識させるシーンの近くには女性もいましたね。陣痛とか悪阻とかもあったのちに誕生ガチャで男を引いたら、男はお国のためとか言って死にやがるんですよ。女が生まれたら後継になれないから露骨にがっかりしたりさ…なんか腹たってきたな…

そして、権力者になるのはいつも男。暴政を振るうのはいつも男。途中上田くんがゴリラをかぶるのウケましたね。

あれって「そんだけ人の上に立ったつもりでいても、お前は所詮一人の女から生まれた、猿の仲間だぞ」って言うメッセージに私は思えました。猿人、原人、旧人、新人…元を辿れば猿ですもんね。

 

女性の”母”と言う役割から考えると、赤のドレスって経血のことかな〜...あとは拳銃やハラキリによって流されたかな〜〜〜

 

人間の人生って潮の満ち引きに例えられますよね。それに生理も月と絡められる。同じダンスを繰り返したり、一番最後に今までやったダンスをもう一度やるのってそう言うところからインスピレーションを得てたりしないかなぁ。

あと、3階のドラやバスドラや和太鼓も丸くて月みた〜いとか思ったりする。3階の打楽器全部丸くてデカかったよね。個人的に、和太鼓を屈強なおじさんが、マリンバで主に使うバチで叩いててびっくりしたよ、音鳴るんだね…意外と強度あるんだね…

 

*WHERE THERE IS PRESSURE THERE IS FOLKDANCE

 

「抑圧が存在するところには、土着の踊りが存在する」

最初見たときに、"There is a will, there is a way."っぽいと思いました。「意志があれば道が開ける」みたいな意味です。これ、リンカーン大統領が奴隷解放を求める演説の中でも述べているんです。ポリマザにおいて、”人種”は割と大切な気がする。1人1人をしっかり見たいなぁ...

 

どこの国だったか忘れましたが、戦争中にダンスが禁じられた場所があります。そこの人々は窓から見えてしまう上半身は全く動かさずに(無表情で)足元だけ動かす土着の踊りが生まれます。イメージ的にはコサックダンスですかね。コサックダンスがそうだか覚えてませんが、フランス語の教授が話してたので、まぁなんかその辺の地域です。

 

ここにきて、チェックシャツ上田くんの話をしますが、パンクロックといえば、1960年代のイギリスですね。Sex Pistolsとか、Vivienne Westwoodとかのあのゴリゴリの時代です。若者が政治に反発するって言うのが当時の人からしたら新鮮だったのではないかなと思います。細かく言うと上田くんのシャツはチェックではなくて、タータンだったのでイギリスのファッションに通じますね。Vivienneでもタータンを用いたデザイン多いです。ロックの起源ってどんな感じなのかな。

 

また、最後のパーカー着たダンサーさんは現代の若者ですかね。現代においては、個人に目を向ける機会が多くなっています。ダンスでも1人のダンスをみんなで見るパートがありましたね。現代のfolkdanceってなんなのかなって思いましたけど、服装から考えるとストリートダンスですかねぇ...ストリートダンスと近いところにある音楽はラップとかでしょうか。ラップで韻を踏んで社会を風刺することとかもあるので、そう思うと親や社会の規範通りに生活をしていた昔の若者よりは、現代の若者の方が意見を述べやすい社会になっているのではないでしょうか。

 

まとめ

上田くんが「社会の縮図」と言っていましたが、POLITICALな有史の文明社会とMOTHERの先史の自然社会を対比した舞台のように思いました。観る人の知識や文化的背景によって、様々な見方ができそうで興味深かったです。上田くんが大抜擢されたおかげで観られてよかったです。超ハマり役だったと思います。ホフェッシュさん、また上田くんを宜しくお願いします...あなたの審美眼サイコーだよ...

 

 

乱文・長文をお読みいただき、ありがとうございました〜!!!